キャリコン四方山話・其の一
キャリアコンサルタントをやっていると歴史上の様々な事象をキャリアに結びつけて考えたくなる。最近、塩野七生さんの「ローマ人の物語」を再読しているのだが、共和制末期のローマがその版図を急拡大させた理由の一つは失業者対策であったという。
当時のローマはハンニバル戦役が終結し、強敵カルタゴを滅亡させ、ひと時の平和を迎えていたが、その一方で既に職業化した兵士が大量に余ってしまっていたという。
彼らはなまじ専業兵士と化していたため、戦役が終結しても他の職業にかんたんに転職はできず、いわば失業状態であぶれてしまっていた。
その状態を解消するためにローマ政府は植民事業や公共事業を行うのだが、最も手っ取り早いのは戦争をすることである。
さらに塩野さんいわく、「人は職業を失うと持っていた人としての誇りまで喪失してしまう」と。 仕事とは報酬を得る手段ではあるが、それと同時にいやそれ以上に社会の中での自分の存在意義を確かめる営みであると思う。
意に反した失業をすると、自分が世の中に不要の人間であると思ってしまう人がいるが、それはその理由による。
極論かも知れないが、時の為政者にとっての最重要課題は「雇用の確保」であり、それこそが安定した社会を築く礎であると思う。
どのような御託を並べようと雇用を確保できない政府は悪でしかない。
一方、戦争が永続化していると必ず戦争を生業とする職業軍人が登場するが、気をつけないとそれは他人(他国)や自分を斬る刃にもなる。
人にとってのキャリアとは、かくも奥深いものである。
MOON CHILD さんによる写真ACからの写真
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