感情の深掘り
キャリアコンサルティングについて学び始めた頃、 ロープレ練習では感情の深掘りが足りないなどと言われることがよくありました。
クライエント役の人が「つらい」と発言しても、そのままそれを受けとめることもなくやり過ごし、 次の質問に行ってしまうというアレですね。
当初はその理由を自分の人の感情に対する感受性の低さのせいにしていましたが、勉強を重ねるうちに実はそういったことではないことに徐々に気がつき始めました。
自分が感情の言葉をやり過ごしてしまう最大の理由は、感情の言葉の背景にあるクライエントの人間像を見ようとしていないことです。
人間像とは、その人の感情の持ち方だけでなく、 価値観や自己概念、それとその人を取りまく環境の中での振る舞い、そうしたことが一体となったものです。 そうした人間像を見ようとせずに たんに発された言葉だけをテキスト的に受け取っているだけなので、やり過ごしてしまっていたのですね。
ところで、なぜ感情の言葉を掘り下げる必要があるのでしょうか。
それは面談の構造の中でどんな意味や意義があるのかを考えるとわかります。
私はクライエントが発する感情の言葉は「ドア」であり、それに応えて質問をすることが「ノック」であると思うのです。
例えばライエントが「つらいんです」という発言をしたとき、そのドアの向こうを確かめる必要があります。 「いま、つらいと仰いましたが、差し支えなければそのように感じられたことについてもう少し詳しくお話を頂いてもよろしいでしょうか?」あるいは「つらいのですね」のようにノックします。
面談でもロープレでも、このようなドアとノックがありませんと話が深まりません。
話が深まらないとクライエントの人間像がはっきり見えず、関係構築もうまくいきません。 となりますと、クライエントが抱えている問題や解決への行動の糸口が見えてこないのです。
ただし、感情の言葉を面談の冒頭から拾いまくっていると、それはそれで話が深まりません。
ドアをノックするときは、そのドアの周囲の情景や環境もよく観察しておく必要があります。
そうでないとせっかくドアを開けてもらっても、その人を取り巻く環境の情報が不十分なため人間像が理解しにくいのです。
一般的には面談冒頭である程度環境情報を聞いたうえで、出来事にまつわる感情の言葉を拾うのが無難ではあります。
次回は、伝え返しについて書きます。
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